萬坊庵・つれづれの記(BLOGと演奏情報)

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2006年 02月 09日

伊福部昭 死去

91歳だから、大往生だと思う。
ご冥福を祈る。

と書いておいてなんだが、僕はそんなに熱心なファンではない。
ミニマル的な展開を見せる書法(「ゴジラのテーマ」はその典型例)はユニークだし、アイヌや東北の北方的な音の世界を大胆に引用駆使して、新鮮な世界を提示してくれたのは功績だと思うが・・・・なにぶん、クドいのだ。
まあ、クドくないと言えない事があるのは僕も承知しているが、長い、っていうのは、現代の表現においては必ずしも美徳ではない。

と、ごちゃごちゃいちゃもんを付けてしまったが、長いからこそ、そのなかに「生の諸相」とでもいうべきものを存分に盛り込んだ作品が書けた、ということでもある。(要するに、僕は、短いものの中に凝縮するタイプの表現がどちらかと言えば好み、と言う個人的なことに過ぎない)

「トッカータ」「日本組曲」がそれだ。
暗い音の執拗な流れが、激しく高まって、ある希望の力強い表情に変わったところで終わる前者。
東北の風俗を煌きとBLUES的な重さの中で見事に構築した後者。

日本的、というときに必ず(無責任に)言われる「わびさび」なんか吹っ飛ばして、でも、土俗的な「心の中の日本」を感じる。
この「日本」は、閉じていない。かといって、身もふたも無く「開いて」もいない。
痛くて、ずっしりとしてて、懐かしいのに、冥界を見るような・・・・・

実は伊福部先生の功績は、このことだと僕は思う。

by ryosai160 | 2006-02-09 22:34


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