萬坊庵・つれづれの記(BLOGと演奏情報)

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2007年 01月 13日

響く

今日は時間があったので、百道の市立総合図書館に行く。
たまたまシネラ(映像施設)で坂妻の『無法松の一生』をやってたので見た。

昔(特に戦後すぐの頃)の日本映画を見てよく思うのは、「空間が広い」ということである。
だからか、役者の声も「言葉を喋っている」のではなく「言葉という音が鳴っている・響いている」という感じがする。特に笑い声が。
それだけ街の空間の中に、倍音がふんだんに在ったのだろうと思う。それが反って新鮮である。

失われた響き。

その後、三越で明日まで開催されている、三輪壽雪という今年96歳の萩焼の人間国宝の方の回顧展に行く。
展示の殆どが抹茶茶碗であった。
もともとは生活の道具であった茶碗が、ここでは「一点もの」の「宇宙の中の必然」に高められている。そして、気に入ったひとつの茶碗に特に見入っていると、「物質の最高の姿の中に宿る精神」とでも言うべきものと対話している、という気にさえさせられる。
モノを超越して、ナマエノナイモノに邂逅したような錯覚・・・・時間を忘れて、「見る」ことに耽る。大変幸せである。

僕は音(楽)をやってはいるけど、音(楽)から影響を受けたり本質的なことを考えさせられることは、もはや無い。
精神を傾けて、「見る」ことが一番面白い。心に響くことは、モノの奥の見えないものを「見る」ことが出来たら自然に起こる。

by ryosai160 | 2007-01-13 20:40


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