萬坊庵・つれづれの記(BLOGと演奏情報)

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2012年 05月 12日

旅先で「諏訪内晶子・燦めく室内楽」を聴く

一人旅がたまにしたくなる。
で、宮崎に行ってみた。宮崎は阿蘇経由で高千穂ぐらいしか行ったことが無く、市内は仕事でもプライヴェートでも縁がなかったので、安い高速バスも開通したことだし・・・というので。
旅先に着いてから、あれこれウロウロする計画を立てるのが何時ものことで、絶対に行きたいところだけ一つかふたつ予め決めておいて、あとは現地でコーヒーでも飲みながらネットで調べたり街の案内パンフを見たりしてうろつき先を決める。
消化試合みたいな旅はなるべく解消したい。
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ホテルのロビーのチラシをいろいろ眺めていると、開催中の「宮崎国際音楽祭」のがあり、中を見ると、ちょうど予定のない日に、表記のコンサートが開催されると言うことで・・・・諏訪内女史は何か凄い年代モノのストラディバリウスを使っているとか、メディア的な派手な露出とはまた別に演奏家としては素晴らしくて特に音色がいいとか聞いていたので聴いてみたいナとは思ってたので、早速、会場のメディキット県民文化センターにチケットを買いに行った。
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B席で3000円。福岡のアクロスあたりでは、考えられない価格。旭化成がバックアップしているから可能な価格設定なんだろうか。それにしては、イマイチ売れていない感じではあったが。
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当日、会場のアイザックスターンホールは、7割がた埋まっていた感じ。高名な演奏家のコンサートにしては、とも思ったが。
しかし、演奏は素晴らしかった!!行って良かった。運のよさに感謝。
楽器も素晴らしいんだろうけど、諏訪内女史の音色は、本当にまろやかで変化と陰影に富んでいて、容姿も相俟って、内面も成熟したイイ女の醸し出す雰囲気のものであった。真面目で学究的な性格の方のようで、曲によって音色を使い分けたりしたが、それも思い付きではなく、たとえばバルトークのルーマニア民俗舞曲では、途中に笛をモチーフにしたフレーズが出てくるが、あたかもルバーブやネイのような音色をバイオリンで奏で、もとになった民俗音楽にも耳を傾けているんだろうな、と思ったり。
チャイコフスキーの曲では、独特のロシアの風土を感じさせる雰囲気が、ロシア出身の共演者と共に醸し出されていた。あの、沈んだような響きのピアノの和音にマッチした音色、秘めやかで情熱的なチェロとの掛け合い。「そこ」で自然に生み出された音楽のようだった。
即興というのとは違うが、風土という酒樽から抽出された極上の酒の一滴一滴のようなひとつひとつの音・・・といったらいいのか。チェロの音色とそのひた向きに奏でる姿に厳しくも温かい大地に生きるロシアの農夫をフト思い、音で綴られる風土の息吹のような感じがして、クラシックを聴いていてこんな身近な気持ちになったのも初めてだった。
終わって満場の拍手が鳴り止まず。
お決まりのアンコールは無し。
それも、演奏会そのものの輪郭がハッキリして、とても良かった。

by ryosai160 | 2012-05-12 19:10 | performance/live


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