萬坊庵・つれづれの記(BLOGと演奏情報)

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2009年 06月 21日

方角

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もう6月も下旬、早いものだ。
季節は巡っているのに、気持ちがいまひとつ付いていかない・・・・のはなぜか。

とも、言ってられない。
8月にフランスでリハ予定の山本先生作曲の「風の庭」の完成稿が出来たので、市内某所の先生宅にお邪魔して、打ち合わせ。尺八&部分的にエフェクターを使うので、機材も持参。いままでも打ち合わせは喫茶店で行っていたが、これからは本格的なものになる。
尺八の技法や、リバーヴとディレイ(それぞれに様々な種類がある)を掛けた演奏を実演しつつ、お互いに確認していく。尺八独特のトレモロやフラジオ(「コロコロ」等それぞれに固有の名称がある)など、実際にやってみないとニュアンスがわからない。しかし、先生は東洋の音楽観にも精通されているので、アンサンブルの間合い・フレージングなど、尺八で吹いても実に自然。「こんな無茶なフレーズ吹けねーよ!」とか、尺八を知らないで書かれた譜面にありがちな不満は全く無い。と、僕のような尺八チンピラがエラそうに言ってはいけないが・・・・そして、ミュージックコンクレートなどの電子音楽にも勿論通じておられる(なんせ、クセナキスの作ったUPICの日本代表で海外に行かれたぐらいだから!)ので、エフェクターのニュアンスも即座に理解され、的確な使用法を指示してもらえた。昔、山本先生作品を演奏したとあるコンサートで、僕のソロコーナーがあり、そこで、僕は、エフェクターを使った。ホールなので、折角だから使ってみるか、ぐらいの気持ちだったのだけど、先生は、有難くも、そのときの僕の演奏に感ずるものあったらしく、「風の庭」でのエフェクター使用、となったわけである。
僕としても、熱を入れて取り組んでいることが、第一線の作曲家の方に認めていただいて、非常に嬉しい。
確かに、尺八にエフェクターを通すことには否定的な意見が多いのは理解できる。出来るけど、理解したって、だからどうした、ってことなのだ。そういうあんたはマイクを使っとるやろ、それはエレクトリックと違うんね、って。エコロジストとか言う人たちは、文明の利器の車で行動しとるんやろ、とも思うし、どうせ使うなら、突っ込んで使ってみたい、っていうだけなのだ。それと、電気の力で感覚が広がるし。ジミヘンやピート・コージ、サンタナのスペースサイケデリックな音は、エフェクター無しには有り得ない。エレクトリック・カリンバを駆使するコノノNO.1のリーダーは、「電気を通さないと神様に音が届かない」って言ってるし。
共感するね。「原始人」たちの直感に。
・・・・ちょっと脱線したが、ミニマルな打楽器のフレーズにディレイを掛け捲った尺八が漂うシーンがこの曲にはある。まだ音符で想像するだけの現段階でも、想像するだにワクワクする。
このワクワク感を大事にしたい。

先生は秋に中国に行くお話もあり、他のコンサートでの色んな曲のアレンジもあり、人と会うお約束もありで、超多忙なので、時間が来てお暇する。先生としても、安心されたということなので、僕も一安心。来月、共演するフランスのパーカッションの方と福岡で会う予定。そこで、色々と具体的な話になるだろう。


六本松の「三和珈琲館」にて、珈琲を飲みながら、レクチャーの復習とか、付箋紙に書き散らかしたメモの整理とか。
このお店では、何時も窓際の席に座る。
福岡に帰ってきた13年前から、そうしている。
この窓際の席で、色んな人たちと会った。
何時も、昔をボンヤリと思い出す。
その頃からは思いがけない人生の方角に来たが、大学の哲学の恩師は「回り道こそ道」と仰っていたっけ。
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by ryosai160 | 2009-06-21 20:59


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