2009年 09月 22日
毎年、9月の連休の時期に、「福岡古楽音楽祭」があるのは知っていたが、行く機会がなかなか無かった。 11回目の今回、初めて行った。 古楽、というのは、バロック音楽を中心にした、古楽器で奏でられる所謂ヨーロッパ音楽の事であると思う。 音楽監督は、その世界では権威とも言える有田正広氏。 連休中に、充実したプログラムの数々で色々聴きに行きたかったが、残念ながらそうもいかず。 的を絞って、表題のコンサートに行ってきた。 W.V.ハウヴェは、リコーダーに興味を持っていた高校生の頃から、リコーダーのヴィルトオーソとして名前は知っていた。 S.マルクは、彼の高弟のようであるが初めてお目にかかった。 2曲目の、2人でステージに出てきて、お一人ずつ順番にソロを演奏し、最後にデュオになるという曲(とても聴き応えがあった)において、それぞれの対照的芸風がハッキリと感じられた。 ガッチリと構成的な演奏でシャープな音色のハウヴェ氏に対して、飄々として軽やかな演奏と枯れた感じの音色のマルク氏。 それぞれの特色が出た演奏としては・・・・ ハウヴェ氏はイサン・ユンのリコーダーのためのソロを3曲。韓国出身で日本やヨーロッパで作曲活動と政治活動を平行して行ったユン氏の、民族的な素材を現代的な表現に高めつつ、技法に陥らない「引き裂かれつつも力強く生きていくことそのもの」の声を、素晴らしいテクニックと曲に向き合うひたむきさで、見事に描き出していた。まさに現代の音楽、であった。 マルク氏は祖国フランスのクープランの曲において、優雅な田園風景を描き出し、その音は、鳥の声のように聴こえたりした。故郷を想う心の風景が、曲にマッチした暖かく見事な演奏だった。 最後のバッハはお2人に加えて、チェンバロ・ヴィオラダガンバとの合奏。 こういう、リズミカルで心楽しいバッハは、初めて聴いた。 掛け合いがこの上なく楽しかった。 息のコントロールが見事すぎて、口笛をそのまま聴いている様な自然さがあった。 でもリコーダーは、息をたくさん必要としない分、思い切ってパーッと吹けない楽器なので、「抑えつつ解放する」という矛盾を乗り越えないと、表現としては高まらないんだろうな、と愚考する。 吹くのはたやすいが、そこにその人の存在を投影しながら音楽するのは至難の技である、と感じた。 「笛の心」が十二分に伝わってくる、胸を打つひと時だった。 しかもノーマイク。ダイレクトに音が響いてくる。 幸せな空間に浸れた。 加えて、運よく最前列の右手から、至近距離でお2人の演奏を拝見するという僥倖に恵まれた。 音を出す身体。それ自身をジックリ見て、観察して、研究して、反省して、自分の演奏に生かす。 世界的な演奏家の演奏姿は、それ自身が最高の「生きた教科書」である。 色々と学ぶことが出来た。
by ryosai160
| 2009-09-22 23:59
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