萬坊庵・つれづれの記(BLOGと演奏情報)

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2009年 08月 29日

Strasbourg③ リハーサル~パーティ

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日程の殆どは、「風の庭」のリハである。
バスや車で、ストラスブール・パーカッションの専用の練習場に通い、朝から夕方までそこに居る。

公園の敷地内の一角に練習場はある。
使い回しではなくて、打楽器の練習用に設計されて建築されたとのこと。
すごくデッドで無駄の無い響きである。
西洋音楽で使用する打楽器は勿論、世界各地の打楽器、見たことの無い創作打楽器・・・・と、打楽器だらけ。
世界各地での公演のために、梱包された夥しい数の打楽器が隅に置いてある。
クセナキスの写真が飾ってあった。本人もこの練習場を訪れたとのことで、彼の曲用に製作された鉄の打楽器もあった。

尺八を吹き始めた大学生の頃、色んな音楽を聴いてみたくて、住んでいた街の図書館で、無料でLP(その頃はまだまだレコードが中心の音楽の世界であった)やCDを聴いたり借りたり出来るので、セッセと通って現代音楽も沢山聴いた。
その中に、ストラスブール・パーカッションのCDもあった。1曲目はエドガー・ヴァレーズの「イオニゼイション」という、打楽器とサイレンによる何ともエキサイティングなもので、そのリズムの複雑さと躍動感、時折鳴らされるサイレンのシュールさにスッカリ参ってしまい、いまだに僕のフェイバリット・チューンである。
こんな凄い曲を完璧に演奏するストラスブール・パーカッションって、一体どんな集団なんやろ?と、そんな驚きと尊敬の念を持って・・・・・約20年経った。
まさか、自分がそのスーパー音楽集団の本拠地に来ようとは。そのメンバーの一人と共演しようとは。
ホントに、思いもかけない人生だ。

という、感慨はこれぐらいにして・・・・

今回は、全くこれまで音になったことのない音楽を、音にする。「初演」というヤツだ。
それは、僕は、今まで全然やったことの無いことで、それゆえに、少しのワクワク感と大いなる不安を抱いてストラスブールにやってきたのだった。(「恍惚と不安と二つ我にあり」、ということかな?)
山本先生からはスコアとパート譜を渡されて、それを日本でコツコツと「解読」し(なんせ五線譜は全くの素人で初見はほぼ無理)、リハに臨む。音符だけではなく、その背後にある、「日本の庭」にたいする感受性や思想も大切なので、実際に日本庭園に足を運んだり、参考になりそうな哲学書や仏教書を読んだり、瞑想してみたり、自分なりに準備したことが、ストラスブールで具現化する。
しかも、世界有数の打楽器集団であるストラスブール・パーカッションのメンバーと共に。
非常にエキサイティングな体験だ。
今年で尺八吹いて20年になるけど、その節目に相応しい出来事だ。

で、実際のリハはというと・・・・
打楽器は2人、中村さんとクリストフ。クリストフは地元の出身らしい。
予想していたことだけど、彼が、「日本の音感覚」で演奏しづらい、ということが露見した。
たとえば、祭囃子とか歌舞伎のイヨ~~ッ・ポンポン!とか、筧のコーン・コーン・・・・とか、日本人なら、「ああ、あれね」と合点がいく「打の音の風景」というのがある。
「風の庭」には、当然、先生の日本人としてのそういう感性が盛り込まれているが、クリストフは、譜面どおりに演奏するので、アレちょっと違うナ・・・・っていう感じもあったりして、その辺は、先生が懇切丁寧に彼にレクチャーして(僕も日本から持参した日本庭園の写真を彼に見せて説明したりした)、彼も真摯に吸収したので、だんだん、いい雰囲気になってきた。
3人とも、最初は、譜面を追うのに時間が掛かっていたのだけど、徐々に、演奏家同士のコミュニケイションが出来てきて、お互いの呼吸を見計らったり、誰かがちょっと失敗してもフォローできるいい関係になってきた。
リハを始めて4日で、先生によると、7~8割方はOKで、スグにでもコンサートで演奏できる完成度になるだろうとのことだったので、ホッとした。

(それにしても・・・フランス人、とにかくマイペース。
休憩多い。そして長い。 とにかくティータイム好き。話好き。話長い。
かの小澤征爾もフランスのオーケストラの指揮には梃子摺ったとか・・・
しかし、気まぐれの中に最高の集中力と閃きがあるのでとても魅力的であるとも語っていたそうだ。
なんかわかる気がした。)

実は、この曲は、来年、とある場所で行われるイヴェントで初演予定なのである。
内容は、まだ、具体的に決まっていない。
それを決めるために準備して話し合いするのも、今回の滞在の目的である。
ダンス・映像・音のスペクタクルになるということで、様々なアーティストが練習場に集合。
彼らの前で、「風の庭」を披露。
写真撮影用も兼ねて、持参した着物を着て尺八を吹く。着物を着ると、腰が据わって呼吸しやすい。そういうことも改めて実感した。
この曲が、スペクタクルの中心になるというので、やや緊張したが、淡々と吹く。

どっちにしろ、僕は尺八吹きなので。
何処にいようが「そのときの息」しかないだろ、ってことで。
とにかく没頭。

そして、それが、いい結果を生むようだ。
言葉は通じないけど、僕は僕で在ることができる。

見てくれたみんなはビックリして、そして、とても美しい幻想的な音楽だ、という印象を持ったようだ。
イマジネイションを掻き立てるものがあったようで、山本先生の素晴らしいコンポジション力を感じる。
作曲は建築に通じるものがある。

自分の演奏の後は、能(パリ在住の日本人の方で武士を想わせる佇まいの凛とした素晴らしい雰囲気。日本の伝統芸能の凄さを実感)・アフリカのコンテンポラリーダンス(動作の基本形は日本の舞踏を思わせるが、アフリカ人のバネのある身体の動きが加わり、非常にユニークで未知の世界を見た思い)・バラフォンの演奏・バグパイプの演奏・Max/mspのバーチャル・パフォーマー・システムとのコラボ(僕もコラボさせてもらった。非常に面白かった)など、スペクタクルの出演者のそれぞれのパフォーマンスを楽しむ。

フランス人はパーティ好き、っていうのは聞いてたけど、ほんとそうだった。
夜はみんなで食事(昼もだけど)。練習場の裏でテーブルを囲む。
フランス・ドイツ・アフリカ・中近東の料理が並ぶ。(練習場のすぐ近くにオーシャンという大きなスーパーがあり、食材はそこで揃う)
そして、とにかくワインとビール。
ワインが苦手な僕も、すっかり慣れてしまった。というか、現地で飲むと、ああ、ワインってこういう風土の中で育まれてきたんだな、と実感しながら飲めるので、身体にスーッと入っていく。(韓国でマッコリを飲むようなものかも)
それにしても、パーティを含めて、連日肉料理とチーズばっかりである。だんだん、胃が重くなっていく。これは、食文化の違いなので仕方が無い。
その中で、マフェというご飯に独特のシチューを掛けた西アフリカの料理が出て、これは、嬉しかった。やっぱり米、ですね。米はイタリア米だそうで、旨かった。
あと、メルゲーズという中近東の羊のソーセージの独特の辛味も気に入った。

夜9時ごろまでは外が明るい(その代わり冬は午後4時ごろに真っ暗になるそうだ)ので、時間と夜の感覚が狂ってしまう。
何時までもパーティのような気分。

言葉は良く分からないけど、片言の英語でなんとかコミュニケイションする。
みんな、ステキな人だ。笑顔を見れば分かる。
そして殆どの人が、遠いところから来ている。
これだけの人を呼べる中村さんの人徳を感じた。

今度のスペクタクルには WA というタイトルが付けられている。
日本語の「和」「輪」だ。
それは、ホントにぴったりのタイトルだ。

by ryosai160 | 2009-08-29 12:32


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